マラソンを完走するためには、適切な水分補給が欠かせません。
この記事では、マラソン中やトレーニング中に飲むべき飲み物について、
水、スポーツドリンク、経口補水液の違いを分かりやすく解説します。
初心者でも理解しやすい内容で、
あなたのランニングライフをサポートします。
適切な水分補給を学び効率よくマラソン完走を目指しましょう!
この記事の監修は、
ランニングコーチの山田祐生さん。
自身もフルマラソン2時間17分台で走るランナーです。
早速結論:運動の強度とタイミングで分けること!
さっそく結論からお話します。
1時間未満程度の短い運動では【水】で十分と言えます。
それ以上の運動、
例えばマラソンなどであれば、
運動前〜マラソン前半(1時間程度まで)は、
アイソトニックと呼ばれる濃度の濃いスポーツドリンクを、
マラソン後半〜リカバリーには、
ハイポトニックと呼ばれる濃度の薄いスポーツドリンクを
飲むことがオススメです。
これは体液の濃度による浸透圧の変化によるためです。
下記ではそのメカニズムを詳しく解説します。
マラソン中の水分補給の重要性
マラソンは長時間走り続けるスポーツで、
体に大きな負担がかかります。
そのため、
体内の水分をしっかりと保つことがとても大切です。
私たちの体は約60%が水でできており、
水分が不足すると体の機能がうまく働かなくなります。
例えば、
運動中に汗をかくと体から水分が失われます。
体重の2%の水分が失われると、
のどが渇いたり、集中力が低下したりします。
さらに水分が失われると、体温が上がり、疲れやすくなり、最悪の場合、
走ることが難しくなることもあります。マラソンでは大量の汗をかくため、
こまめな水分補給が必要です。
適切な飲み物を選ぶことの意義
水分補給の際に何を飲むかもとても重要です。
単に水を飲むだけでは、
体に必要な電解質(ナトリウムやカリウムなど)や
エネルギー(糖分)を補給することができません。
これらの成分は、汗と一緒に失われるため、
適切に補給しないと体のバランスが崩れてしまいます。
そこで、
スポーツドリンクや経口補水液が役立ちます。
スポーツドリンクには
「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」
の2種類があります。
・アイソトニックは体液と同じ濃さで作られている飲み物。(=等調圧)
・ハイポトニックは体液よりも薄い飲み物。(=低調圧)
となります。
後ほど説明する【浸透圧】の関係で
体液と同じ濃度か近い濃度の飲み物を飲むことが
素早い栄養補給、水分補給には必要になってきます。
浸透圧については下記トピックで詳しく解説します!
マラソンのような激しい運動では汗とともに体内の塩分や糖質が失われますので
普段の体液よりも体内の濃度は薄くなっているので、
体液濃度に合わせて水分を摂る際には、
薄い濃度である【ハイポトニック(低調圧)】が適切であると言えます。
このように、
状況に応じて適切な飲み物を選ぶことで、
効率的に水分補給ができ、
マラソンをより快適に走ることができます。
飲み物の種類と特徴
水分補給には大きく
- ・水(濃度0)
- ・アイソトニック(濃度:高)
- ・ハイポトニック(濃度:低)
の3つに分けることができます。
それぞれの給水のメリット・デメリットを解説します。
3.1 水
水は、塩分や糖分が含まれていない飲みものです。
メリット:
- すぐに吸収される
- カロリーゼロ
水は体内に速やかに吸収され、
喉の渇きを迅速に癒します。
また、
水にはカロリーが含まれていないため、
体重管理を気にする人にも適しています。
デメリット:
- 電解質やエネルギー補給ができない
水には良くも悪くも栄養分は何も含まれません。
汗で失われるナトリウムやカリウムなどの電解質や、
エネルギー源となる糖質を補給することができません。
そのため、
長時間の運動には不向きです。
3.2 スポーツドリンク(アイソトニック飲料)
アイソトニック飲料は、
体液と同じくらいの濃さ(浸透圧)を持っており、
体内に吸収されやすいのが特徴の飲み物です。
メリット:
- 水分と電解質、エネルギーを同時に補給: アイソトニック飲料は、水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質、さらにエネルギー源となる糖質も含まれているため、総合的な補給が可能です。
デメリット:
挙げられるデメリットとしては、水に比べて、カロリーがありますので、
カロリーオーバーには気をつけなければいけません。
適している状況:
アイソトニック飲料は長時間の運動や
暑い環境での運動前に、
効率よく水分とエネルギーを補給するのに適しています。
運動前の体液は濃いので同じ濃い濃度のアイソトニック!
主なアイソトニック飲料
市販のものでアイソトニック飲料は下記
・ポカリスエット
・アクエリアス
・グリーンダカラ
100mlあたりの糖分の量が4g以上のものは
アイソトニック飲料に含まれます。
3.3 経口補水液(ハイポトニック飲料)
ハイポトニック飲料は、
体液よりも薄い濃度(低い浸透圧)を持っており、
激しい運動により、薄まった体液に合わせた濃度に調整されています。
メリット:
ハイポトニック飲料は、
運動により通常よりも薄まった体液に合わせて作られています。
体液が薄まった疲労時には素早く体液として吸収されるメリットがあります。
デメリット:
挙げられるデメリットとしては、水に比べて、カロリーがありますので、
カロリーオーバーには気をつけなければいけません。
適している状況:
激しい運動により疲労している時や激しい運動の回復期に適していると言えます。
大量に汗をかいた後や、激しい運動の後の回復期に、
速やかに水分とミネラルを補給するのに適しています。
なので、塩分が失われている熱中症時にはハイポトニックが有効とされています。
主なハイポトニック飲料
市販のものでハイポトニック飲料は下記
・アミノバリュー
・アクエリアスゼロ
・H2O
100mlあたりの糖分の量が4g以下のものは
アイソトニック飲料に含まれます。
次のセクションでは、
ハイポトニックとアイソトニック飲料の違いについて
詳しく解説します。
ハイポトニックとアイソトニックの違い
違い①浸透圧が違う!
浸透圧とは、
液体が濃度の違う二つの溶液の間で移動する力のことです。
体内の液体は細胞膜を通して移動し、
濃度差を均等にしようとします。
濃度の異なる二つの溶液が接しているとき、
水は濃度の低い方から高い方へ移動し、
濃度差を均等にしようとします。
ここでもう一度おさらいです。
- ・体液と同じ浸透圧である【アイソトニック】
- ・体液よりも低い浸透圧である【ハイポトニック】
この二つは成分は同じものの、
溶媒(純粋な水)あたりの溶質(原材料である糖分や塩分)の
濃度により、上記の二つの飲料に分けられます。
汗を大量にかいたときにアイソトニック(等調性)を飲むと?
運動によって、
体内の塩分や糖分が失われた状態では
体液が薄まっている状態と考えられます。
(濃度が低い)
そこに、
通常の人体の体液濃度で作られた
アイトニック飲料(相対的に濃度が高い)
を飲んでしまうと、
浸透圧の関係で、
濃度は低い方から高い方へ移動しようとするので、
水分がうまく吸収されない(=水分補給に適さない)わけです。
熱中症の時にも同じです。
熱中症は体の体液が薄まっている状態です。
こういった時には経口補水液をオススメされることが多いのですが、
原理的には上記のようなことが体で起こっているためです。
エネルギー(糖質や塩分)含有量の違い
- アイソトニック飲料:糖質ミネラル濃度は4%〜8%
- ハイポトニック飲料:糖質ミネラル濃度は2%〜4%
アイソトニックもハイポトニックも原材料は変わりません。
違うのは水分(溶媒)あたりに含まれる、
砂糖や塩分(溶質)の割合です。
出来上がった砂糖塩水のことを(溶液)と呼びます。
溶液の濃度によって、
トレーニングシーンごとに推奨されるタイミングが変わります。
次のセクションでは、状況別におすすめの飲み物について解説します。
マラソン中に失われるもの
マラソンなどの激しい超持久性のスポーツにおいては
発汗やエネルギー産生のために
体内ではさまざまなことが起こり、
その分失われることになります。
水分
マラソン中に最も重要なのが水分補給です。
走っている間に大量の汗をかくことで、
体内の水分が急速に失われます。
水分が不足すると、脱水症状を引き起こし、
体温調節がうまくいかなくなります。
これにより、熱中症のリスクが高まり、
パフォーマンスが低下します。
人の体には2つの場所に水分が貯蔵されている
脱水症状も、浸透圧が関係しているのですが、
難しく解説しすぎてしまうと大変ですので簡単に。
人の体には、水分を溜め込んだ部分が2種類あります。
(細胞内液と細胞外液)
通常の発汗であれば細胞外液の水分がなくなるだけなのですが、
マラソンなどの度を超えた発汗では
細胞内液の水分も一緒に失われます。
細胞内液は、濃度は薄いため濃度の濃い飲み物ではうまく吸収されず
結果、脱水症状の回復は遅れると思われます。
電解質(ナトリウム、カリウムなど)
汗をかくことで、
水分と一緒にナトリウムやカリウムといった電解質も失われます。
電解質は、筋肉の収縮や神経の伝達に必要な成分であり、
不足すると筋肉のけいれんや疲労感、体調不良の原因となります。
特にナトリウムは、体内の水分バランスを保つために重要であり、
これが不足すると体がうまく水分を保持できなくなります。
エネルギー(糖質)
マラソン中には大量のエネルギーが消費されます。
主なエネルギー源は糖質であり、
筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンが使われます。
糖質が不足すると、エネルギーが足りなくなり、
疲労感が増し、ペースを維持するのが難しくなります。
脂肪もエネルギー源として使われますが、
糖質に比べてエネルギーに変わるまでに時間がかかるため、即効性がありません。
それに人の体にはわざわざ取り入れなくても体脂肪として
あまりある栄養を持ち合わせています。
人の体にはフルマラソン40回は走れるほどの体脂肪がついている!
したがって、マラソン中には糖質の補給が非常に重要です。
状況別おすすめの飲み物
各ドリンクのメリットデメリットを解説してきました。
このトピックでは、状況別におすすめの飲み物を紹介します。
トレーニング時(強度や時間による選び方)
短時間・低強度のトレーニング:
- 水: 短時間(1時間未満)の軽いランニングや低強度のトレーニングでは、水分補給として水が最適です。カロリーゼロで、体に負担をかけずに水分を補給できます。
長時間・高強度のトレーニング:
- スポーツドリンク(アイソトニック飲料): 1時間以上の長時間や高強度のトレーニングでは、アイソトニック飲料が適しています。これにより、水分だけでなく、エネルギー源となる糖質や電解質(ナトリウム、カリウムなど)も同時に補給できます。
レース中(距離や気温による選び方)
・10km以下のレース
10km未満のレースでは基本的には水で十分です。
ただし、
気温が高い場合は、電解質を補給するために
少量のスポーツドリンクを摂取するのも良いでしょう。
・フルマラソン以上のレース(ハーフマラソン含)
長距離レースでは、持続的なエネルギー補給が不可欠です。
マラソン前半では、
アイソトニック飲料を定期的に摂取することで、
エネルギーと電解質をバランスよく補給できます。
マラソン後半では体内のミネラルバランスは大きく変わり、
体液が薄まっていると考えられます。
ですので後半戦はハイポトニック飲料がオススメと言えます。
レース後の回復期
激しい運動後では体液が薄まっていると考えられますので、
ハイポトニック飲料を飲むことがオススメです。
体の状態を見ながら、徐々にアイソトニックや水などを飲むようにしましょう。
自作ドリンクのレシピ紹介
市販のドリンクを利用するだけでなく、
自作のドリンクを作ることで、自分の好みや必要に応じた調整が可能になります。
ここでは、簡単に作れる
ハイポトニック飲料とアイソトニック飲料のレシピをご紹介します。
簡単なハイポトニック飲料の作り方
ハイポトニック飲料は、
水分あたりの糖分を薄くすることで作ることができます。
材料(1リットル分):
- 水 1リットル
- レモン汁 大さじ1
- 砂糖 大さじ2
- 塩 小さじ1/4
手軽なアイソトニック飲料の作り方
アイソトニック飲料は体液と同程度の浸透圧を持ちのが特徴です
水分あたりの糖分を濃くすることが作ることができます。
材料(1リットル分):
- 水 1リットル
- レモン汁(ポッカレモン100など) 大さじ1
- 砂糖(またははちみつ) 大さじ4
- 塩 小さじ1/2
これらの自作ドリンクを活用することで、
市販のドリンクよりも経済的で、
かつ自分の体調や好みに合わせた水分補給が可能になります。
ただし、長時間の激しい運動や極端な暑さの中では、
より専門的に調整された
市販のスポーツドリンクの使用も検討してください。
まとめ
状況に応じた適切な飲み物選びの重要性
マラソンやトレーニング中の水分補給には、
状況に応じた適切な飲み物を選ぶことが非常に重要です。
短時間の軽い運動には水が適していますが、
長時間の激しい運動や暑い環境では
スポーツドリンクや経口補水液が効果的です。
これにより、効率的に水分、電解質、エネルギーを補給し、
パフォーマンスを最大限に引き出すことができます。
自分に合った方法を見つけることの大切さ
最適な水分補給方法は個人によって異なります。
自分の体重、運動量、気温、湿度、体調などを考慮し、
自分に合った飲み物を選びましょう。
自分に合った方法を見つけることで、
健康的にマラソンを楽しむことができます。
今回の記事を参考にして、
マラソン中の水分補給を効果的に行い、
より快適にランニングを楽しんでください!
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